気楽だったあの頃
ふと、自分が小学生だった頃を思い出したくなる時がある。読者諸君もそういったことは良くあるのではないか。
あの頃は、今に比べれば思慮は浅かっただろう。知識も教養もなければ、精神的にも未熟であったことは自明である。
しかし、何事にも囚われていなかった気がする。
世間体も、親の期待も、社会情勢も何もかも知らなかった。あの時あったのは、ひたすらに遊び心だけだった。なんと幸せなことか。
とにかく今思い出せるのは楽しかった記憶、遊びの記憶、そして雀の涙ほどのごくごく僅かな勉強の記憶だけだ。授業など文房具を弄んでいた記憶しかない。
休み時間、校庭をリヴィングストンの如く探検し、もはや我々の知らぬ領域は無かった。校庭のことであれば、探検家スタンリーよりも百倍詳しかっただろう。そのノウハウは遺憾無くドロケイに生かされることとなった。
昼休みから午後にかけて大事なのは遊びの約束だ。放課後何時頃に誰かの家に集合する。一軒家よりもマンションが多かった。親に言われるがままにお菓子を持参したものである。お邪魔します、の一言を忘れてはならなかった。
何にも追われていなかった時代。強いていえば宿題には追われていたが。
ところが今は、常に何かに追われ、何かを考えている。小さいものでは大学の課題、大きくなると将来のこと。将来の夢が無い、なんて嘆いていられる時間はもう少ないようだ。
また同時に、あの頃と比べて小さなことに幸せを感じるようになった気がする。これは良い変化なのか、それとも余裕がなくなったことの表れなのか。前者であって欲しいものだ。
季節の変わり目は体調も、精神的にも不安定になりやすい時期だ。くれぐれも自分を労わって欲しい。